新型コロナの影響で日本も含め多くの企業で売上が低下しています。リーマンショックを上回ると言われている昨今のコロナショックが、日本の企業の生産性にどれほどの影響をあたえるのか。今回は、営業利益率と一人当たりの付加価値生産性から試算をしたので、データと共に解説していきます。
戦後日本の経済危機
戦後の高度成長期(1960年代)から現在の2020年まで、日本は大きく分けて3回の経済的危機を経験してきました。
1番最初の経済危機は1973~1980年頃にかけての「オイルショック」。次は1992~1993年頃に起きた景気後退「バブル経済の崩壊」。3回目の経済危機は2007~2008年にかけての「リーマンショック」です。
この3回の不況の中で一番影響が大きかったのはリーマンショックでした。1960年から2020年にかけての営業利益率と一人当たりの付加価値額をグラフにまとめたので、順を追ってその影響を見ていきましょう。
戦後日本の経済的危機と生産性の推移
【営業利益率】
右の縦軸(青色の数値)は、営業利益の売上高に対する割合を示します、8.0であれば営業利益率8%、100万円の売上に対し8万円の利益が残る計算になります。
【一人当たりの付加価値額】
左の縦軸(オレンジ色の数値)は、社員一人当たりが年間どの程度の付加価値を作ったのか、日本全体の平均値から計算しています。800であれば社員1人につき1年間で800万円の付加価値を作ったことになります。
1976年度のオイルショック、1992年度のバブル崩壊、2008年度のリーマンショックを見てもらうと、営業利益率・付加価値額ともに大きく落ちているのがよく分かると思います。
この3回の経済的危機の中で一番影響が大きかったのはリーマンショックでした。2006年度から2008年度までの間に営業利益率は約2.0、付加価値額は約300以上も下落し、日本経済に大きな影響を及ぼしました。
コロナ不況はリーマンショック以上のインパクト!?
しかし、昨今のコロナ不況はリーマンショックを上回る不況になることが、ほぼ確実だと言われています。
今回のデータは2018年度までが最新なので、ここを起点に類推するしかありませんが、仮にリーマンショックの1.5倍から1.6倍の影響が企業にあったとすると、グラフの一番右「?」マークまで落ち込む予想となります。
2018年度には約6.4%あった営業利益率は通年で2%まで下がり、一人当たりの付加価値額は約1400万円から約850万円まで落ちるのではないかと予想されています。
このグラフのポイントは、日本の生産性は低い低いと言われながら、少しずつ右肩上がりに上がってきていた点にあります。不況の影響で乱高下はあるものの、基本的には落ちても復活するということを繰り返してきました。
しかし、今回のコロナ不況はバブル崩壊頃の水準より更に下回ってしまうのではないか、といったことがグラフから読み取ることができます。
日本はオイルショック頃の生産性まで逆戻り!?
では、グラフの「?」マークの予想値まで仮に落ちたと予想すると、何年前のレベルの生産性まで落ちてしまうのでしょうか。
2020年度の「?」の予測値とグラフが交差するポイントを見ると、おおよそ1982年頃となっており、オイルショックが起きてから5~6年後の水準となります。
もしかすると、今回我々が直面するコロナショックから来る不況は40年ほど時代を遡る程のインパクトがあるのかもしれません。
コロナ騒動の起きる以前2019年の12月までは、色々なものがこれだけの売上を支えることで日本全体が動いていましたが、40年前の水準の生産性まで落ちるということは、社会も企業も、以下の2つのアクションを起こす必要が出てきます。
【1.何かを捨てて効率化していく】
【2.今までのやり方を全部疑って、何が効果的かを探す】
コロナ不況の中でも悲観するばかりではない
今回のこのグラフや予想を見ると、未来を悲観してしまうかもしれません。世の中の売上が落ちたり、人員整理をしなければいけない会社が出る中、一方で不況の中でも売上を伸ばしている会社も当然存在しています。
例えば、飲食業界でいえば宅配に切り替えてこの苦境を打破した例や、アマゾン(Amazon)などでも配達員が足りず大人数を雇用したケースなどが挙げられます。
現在は一時的に厳しい状況となっていますが、永久にこの状況が続くことはないとも言われています。アフターコロナやウイズコロナといった言葉も掲げられていますが、これからの未来、どうやって我々の持っている力をチームとして引き出していくのかを、これからも発信していければと思っています。