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新卒からジョブ型を導入?背景や課題、これからの人事制度を解説

カテゴリ: 一般公開

2021年1月27日の日本経済新聞では、経団連が新卒からジョブ型を提案したと報じられています。

“コロナ後の成長に向けては働き方の変革も求められており、ジョブ型雇用の推進など日本経済の生産性を高める改革が大きな課題になる。”

※引用
経団連、新卒からジョブ型を提案 春季交渉
(日本経済新聞)

毎年この時期になると春季労使交渉が始まり、経団連といった団体の見解が公表されます。中でも今回は、ジョブ型を若い世代から取り入れていく方針が打ち出されているようです。

今回は、新卒のジョブ型導入について背景や課題などを解説し、これからの人事制度を考えていきます。

新卒でジョブ型の導入が必要な背景

新卒でジョブ型の導入が求められる背景を考えてみましょう。

高度な専門職が登場

最近はAIが注目され、AIエンジニアの需要が高まっています。

AIエンジニアとは、ビジネスの課題をAIで解決する職種です。主に、さまざまなデータをAIに与えて学習させる機械学習エンジニアと、データ解析にもとづく施策立案を担うデータサイエンティストに分けられ、細分化すると他にもいくつかの職種に分かれています。

PythonやJavaScriptといったプログラミング言語や、近年AIとともに注目されているIoTの知識、プロジェクトマネジメントや、複数のメンバーで仕事をする際のリーダシップまで求められます。

しかし、このような高度な専門スキルを持つ人材の給料は、日本よりも中国や香港のほうが高いことがわかってきました。

日本が海外に遅れを取る理由

過去をさかのぼると似たような状況がありました。2015年には、BRICsの一国であるブラジルにおいて、管理職の給料が日本よりも高くなったというニュースが報じられました。

ブラジルは基本的に労賃が安いといわれるだけあって、衝撃を受けた人もいたのではないでしょうか。管理職の仕事を任せられる人が少なく、需要と供給の面で生じた傾向かもしれません。

ただ、日本は戦後の混乱期を乗り換えるため、生活に必要な給料の支払いをベースに、賃金制度を形成していたという背景があります。高度な専門スキルに高い賃金を支払うのは社会的にためらわれる傾向にありました。

その点をふまえると、日本が海外に遅れを取る昨今の状況は不思議ではないかもしれません。

競争のグローバル化

競争がグローバル化し、世界で人材の争奪戦が起きるようになりました。今までの古い給与制度では日本で通用しても、海外の現地子会社にあてはめると全く使い物にならなくなります。

たとえば、グローバル企業であれば海外から日本に来てもらって仕事をしてもらう場面はたくさんあります。

海外のアメリカ人を日本の部長職に着任させると、給与が数千万円になることも珍しくありません。遠隔地で働く費用や住宅の費用、子どもの教育費用など、さまざまな手当てがつきます。いずれもアメリカで働いていればもらえなかった費用です。

これが人材獲得競争の現実です。

現代でいえば、AIエンジニアといった専門職の給料が海外に劣れば、グローバル競争に負けてしまうでしょう。

こういった背景から、新卒からジョブ型を導入し、高度専門人材を役立てたいという意見が出ているのだと考えられます。

日本における高度専門人材の給与動向

新卒からジョブ型を導入するアイデアは、現在の経団連会長がジョブ型で注目される日立製作所出身であることも影響しているかもしれません。

日立では、2021年度入社の新卒採用において、デジタル人材専用の採用コースを設定しました。

“同コースの採用者にデジタル分野の研究開発職やデータサイエンティストへの配属を確約する。給与は個別に設定し、同社が従来採ってきた学歴別の一律初任給から脱却する。世界規模でデジタル人材の争奪戦が激しさを増すなか、入社後のキャリアパスを明確にし、待遇を引き上げ、有望な人材を確保する考えだ。”

※引用
日立がデジタル人材専用の新卒採用コース新設、一律初任給から脱却
(日経クロステック)

一律初任給から脱却し、給与を個別に設定します。要するに、高度なスキルがあれば高い給与が支払われるということです。

日立に限らず日本では、高度専門人材の給与が高く設定される傾向になりつつあります。

理系人材向けサービスを運営するアスタミューゼの求人調査(2019年2月1日~2020年1月31日)によると、AIエンジニアの年収レンジ(求人に掲載された給与額の幅)は、下限が平均495.6万円、上限が平均914.3万円とのことでした。

※参考
「AIエンジニア」の転職状況を60万の求人票データから探る。AI領域の専門性、技術・スキルなどの採用要件とは。
(PRTIMES)

新卒からジョブ型を取り入れると、ますます高度専門人材の給与が高まっていくことでしょう。

新卒ジョブ型採用の課題

新卒ジョブ型採用の課題を解説していきます。

高度専門人材の能力判定

これまで専門スキルを持つ人材は、大学が育成を担ってきました。しかし、これから求められるのは高度専門人材です。

高度専門人材の採用では、コミュニケーション力や社会人としての基礎スキルを前提に、専門スキルが重視されます。

入社にあたって、新人の段階で特殊なスキルを持った人材が選別されます。ただし、通常の新入社員と高度専門人材に関して、能力の差を判定するのは困難です。人事評価も難しくなるでしょう。

人事評価は正確性だけでなく、納得性も重要です。評価体制が不透明だと、特別なスキルを持たない社員からも不満が生じます。

ジョブ型とベースアップの両立

賃上げにも目を向けなければなりません。日本では毎年約2%というベースアップが目安とされています。

ジョブ型は、仕事内容によって給料が固定される仕組みです。つまり、仕事が同じであればベースアップはしません。

たとえば、レジ打ちの仕事を時給1,000円で行った場合、同じ仕事を続ければ時給は1,000円のままです。

にもかかわらず、ジョブ型をベースとした賃上げが求められています。なぜなら、GDPの大部分は個人消費であり、賃上げしないと消費が活性化せず、GDPが伸びないからです。

ジョブ型とベースアップの両立では、かじ取りが難しくなるでしょう。

新卒ジョブ型採用における人事制度

まずは専門性が高い人材を会社で採用して働いてもらい、適切な給料を支払います。該当しない総合職に関しても、納得性を高めるために適切な賃上げをしていく必要があるでしょう。

また、高度専門人材に高い給料を支払うには、資金を工面する必要があります。しかし、会社が払える人件費は限られています。

企業としては、付加価値を生み出せる人材、売上を上げられる人材、複雑な仕事をこなせる人材、新しい企画を通せる人材などを獲得する必要があります。人件費のコントロールをしつつ、優秀な人材を確保しなければなりません。

もちろん、外部の投資家に向けた情報開示も求められます。人事制度は特定のひな型を適用しても、会社の将来が安泰になることはありません。自社の経営状況に応じて、オーダーメードの制度を追求する必要があります。

新卒ジョブ型採用を見据えたキャリア設計が必要

2021年に入ってから春闘が始まる時期が訪れ、あらためて新卒に対するジョブ型が提案されました。

おそらく日立製作所や富士通などは対応していくでしょう。自動車会社やエンジニア企業に関しても類似した動きが出てくるかもしれません。

新卒ジョブ型採用では、スキルを持たない人材が雇用される可能性は低くなります。そのため、今後は個人としてスキルを積極的に取り入れていくことが大事です。

たとえば、人事であればさまざまな専門領域があります。採用・評価・労務・給料などです。とにかく未開拓の分野を開拓していく必要があります。

これから就職活動を控えている学生は、あらためて自分のキャリア設計について考えなければならない局面に立たされたといえます。

新卒、ジョブ型、専門性などのキーワードに注目して、今後の動向に着目するとよいでしょう。



こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご覧ください。

新卒からジョブ型ってホントにできるの?

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