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賃上げの必要性について徹底解説!人件費と会社規模の関係は?

カテゴリ: 一般公開

菅政権では、さまざまな経済政策が提唱されています。その中でも注目してほしいのが、賃上げに関する方針です。

“菅氏はこの日、賃上げについては言及しなかったが、すでに経済財政諮問会議などで「デフレへの後戻りを回避するため、賃上げの流れを継続してほしい」と発言、賃上げ継続を求めている。”

※参考
「官製春闘」菅政権でも継続 政府、経済界に賃上げ要請へ
(Sankei Biz)

賃上げをすると企業の経営を圧迫するため、賃上げに後ろ向きな企業もあるかもしれません。なぜ、賃上げが必要だと発信されているのでしょうか。今回は賃上げの必要性について解説していきます。

賃上げの必要性は?

賃上げを提唱しているのは菅政権だけではありません。デービッド・アトキンソンという専門家も賃上げを提唱しています。

デービッド氏は、もとゴールドマンサックスのアナリストで、海外からの視点で日本の強みを分析し、日本の生産性を高める方法を提言しています。

※参考
日本人の勝算-人口減少×高齢化×資本主義- デービッド・アトキンソン著
(東洋経済 STORE)

デービッド氏によると、最低賃金を年率で5%ほど引き上げることを提唱しています。最低賃金を引き上げると、全体的に給与を増やさなければなりません。

たとえば正社員であれば、大卒の初任給が増えると、長く働いている社員や上司の給与まで増やさなければなりません。また、パートさんの賃金が増えれば、正社員の給与も増えるでしょう。

ただ、本当にうまくいくのであれば、賃上げの是非について議論は起きません。賃上げは本当に必要なのでしょうか?

賃上げには企業規模が関係している

デービッド氏によると、企業規模の拡大、最低賃金の引き上げ、生産性の向上、人材育成トレーニングの強化が推奨されています。

興味深いのは、企業規模と最低賃金の話がリンクしていることです。デービッド氏は、賃上げの話と同時に中小企業の数が多いことにも懸念を示しています。

中小企業を統合して数を減らしていくのも重要とのことです。賃上げの必要性を理解するために、まずは事前知識として関連ワードを解説し、データを分析していきます。

労働装備率と労働分配率

賃上げの必要性を理解するために必要な言葉が、労働装備率と労働分配率です。

労働装備率とは、従業員一人当たりの設備投資額です。有形固定資産額を従業員数で除した数値をさします。

有形固定資産は設備や装置をさし、数字が大きくなると、機械化が進んでいることになります。機械化が進めば、生産量が増えたり、人件費が減ったりするとわかるでしょう。

労働分配率は、会社が生み出した付加価値を占める社員の人件費の割合です。人件費を付加価値で除した数値をさします。

会社が生産活動をすると、顧客からお金を獲得できます。お金から費用を除いた金額が付加価値です。付加価値は会社の資産と社員の給与に配分されます。

従業員数が増えると労働分配率の減少率が低くなる

横軸を労働装備率、縦軸を労働分配率としたグラフを確認してみましょう。グラフ内の数値は従業員の数です。

従業員の数が増えるにしたがって、労働分配率が減り、労働装備率が増えています。一人当たりの設備投資額が大きくなり、機械による自動化が進みます。

このとき、労働分配率まで減っている点も見過ごせないポイントです。

中小企業の定義は経営者にもよりますが、デービッド氏の考えによれば、製造業においては300人以下の企業が中小企業だとしています。

グラフでは、従業員数が300人を大幅に超えた付近をみると、労働分配率の減少率が低下しているとわかります。

このことから、中小企業を統合して大企業の数を増やすと、社員の給与が下がりにくくなるという事実が読み取れます。

会社の規模が大きくなると給与が増える

横軸が社員一人当たりの付加価値であり、縦軸が社員一人当たりの人件費です。社員一人当たりの付加価値が増えるほど、給与が増えることを示しているグラフです。

グラフにおいて、社員一人当たりの人件費と付加価値が低い領域は、規模が小さい中小企業です。社員一人当たり人件費と付加価値が高い領域は、規模が大きい大企業です。

会社の規模が大きいほど、一人当たりの付加価値は大きくなり、結果として人件費が増えます。

中小企業も会社の規模を大きくすれば、設備が増えて生産性が高まり、給与を増やせるとわかります。このことは、日本の製造業でも見受けられる傾向です。

付加価値と労働装備率を高める方法

では、付加価値を高めるにはどうすればよいでしょうか。付加価値を高めるには、労働装備率を高めるのが一番手っ取り早い方法です。

労働装備率を高めるには、会社の規模を拡大することが必要でしょう。なぜなら、会社の規模を大きくすればお金がまわり、設備投資が行われるからです。

つまり、会社の規模を拡大して、労働装備率を増やしていけば、結果として付加価値が大きくなって、給与が増えます。

ただ、会社を合併すれば生産性があがるのか、疑問に思う方もいることでしょう。実際は、そう簡単にはうまくいきません。というのも、会社には文化やポリシー、風土があり、それぞれが異なるからです。

異なる会社が同じ方向を目指すまでには、時間や労力がかかります。それをふまえると、最良な方法は、一つの会社が合併しないで大きくなることでしょう。方針の変更によって、従業員にストレスを与えなくて済みます。

賃上げを見据えた経営も検討

以上の考察をふまえて、あらためて賃上げの必要性を考えてみましょう。賃上げをしたら、売上を増やさなければならず、そのために社員の教育もしなければなりません。

社員の教育を行い、売上の増加に成功すれば、必然的に企業の規模も大きくなります。最低賃金を増やして経済を活性化するという考え方も、筋が通っているとわかります。

つまり菅総理は、儲かってから給与をあげるのではなく、先に賃上げをしてみてはどうだろうかと、考えているのではないでしょうか。

現在、経営を勉強している方はたくさんいるでしょう。知っておきたいのは、会社が売上をあげたときの使い道です。

社員に給与を支給したあと、会社は設備か人に投資します。デービッド氏は、設備と人材の両方に投資して、バランスよく成長していくことを推奨しています。

コロナで働き口が減少する中で、業績を伸ばしている会社も、少なからず見かけるでしょう。業績を伸ばすには、新しいアイデアが生まれやすい環境や、部門間で協力しやすい環境を整えるなどの工夫が必要です。

多少荒療治かもしれませんが、菅政権やデービッド氏が提唱する賃上げも、コロナ禍で注目できる考え方でしょう。

賃上げの必要性がデータで証明できる以上、根拠なく抵抗するのは得策ではないかもしれません。

素直に受け入れて、事業の方針転換や、あらためて注力したい投資などについて、今後の事業を見つめ直すのもよいかもしれません。

学生や転職を考えている方もいるでしょう。会社を見極めるときは、人件費や最低賃金に関する経営者の考え方にも、ぜひ着目してみてください。



こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご覧ください。

「菅政権で給与アップのチャンス?」

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