失敗するジョブ型人事制度の特徴

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ジョブ型雇用は専門スキルの高い人材を確保できる採用形態であり、教育コストがかからない点などは魅力的に見えるかもしれません。

しかし、ジョブ型雇用にはメリットばかりではなくデメリットもあり、そのポイントを知らないと導入後に必ず後悔してしまうことになります。今回はジョブ型雇用の導入にあたって注意すべきポイントをお伝えしましょう。

ジョブ型雇用を導入する際の注意点

最近では、数多くの企業で人事や仕事の方法を見直すために議論がなされています。中心的な議題は、ジョブ型とメンバーシップの雇用形態の選択です。 早速、正しい雇用形態の選択方法についてお伝えしていきます。

ジョブ型雇用にもデメリットがある

1980~90年代の大手企業では、年功序列式の賃金形態が主流でした。昇格は年次管理であり、入社年度によって、トップ層やセカンドグループの昇給が行われていました。

人事については、さまざまな仕事を遂行して定期的な人事異動をしながら管理職になる人もいれば、専門職を続ける人もいました。

しかし、外国資本の参入によって人事制度が近代化し、職務型、いわゆるジョブ型に近い制度が新しく採用されていきます。

制度の切り替えにあたって、従来のメンバーシップをジョブ型に切り替えなければならず、当然時間もかかったことでしょう。

徐々にジョブ型に移行していった過程を経験している社員は、メンバーシップ型とジョブ型の両方について、メリットとデメリットを目の当たりにすることになります。

最近の論調は、働き方改革を推進するにはジョブ型に切り替えればよいという意見が多く見受けられます。

しかし、ジョブ型雇用にもデメリットは確実に存在し、導入後の注意点についても事前に把握しておかなければなりません。

注意点1.新卒採用との相性が悪い

一つ目はジョブ型採用と日本の新卒一括採用は非常に相性が悪いことです。

一般的にスタートアップの会社、いわゆる起業して間もない会社は、新卒の獲得をためらう傾向があります。

スキルがない人を採用しても教育に時間がかかるし、そもそも教育を担当できる人材が少ないからです。そのため、必然的に経験者採用になってしまいます。

新卒採用では、新入社員は望まなくても研修を受けさせられ、総合職としてのキャリアパスを設定されます。

その反面、ジョブ型雇用では社員が自らスキルを高めることが前提です。仕組みのうえでは、新卒の新入社員を雇っても教育を施す環境を整えにくいといえます。

注意点2.中途採用の難易度が高まる

ジョブ型雇用は職務内容を定義してから採用を行いますが、その仕事内容定義するためにジョブディスクリプション(職務記述書)という書類を作成します。

中途採用を担当する人事担当者は、企業の業態によっては膨大な内容量のジョブディスクリプションを作成することになるでしょう。というのも、ジョブ型雇用ではピンポイントで職務を設定するので、抽象的ではなく具体的な内容を記さなければならないからです。

当然、記載された内容は高度で専門的になり、それに見合うスキルを持っている人材が存在しなくなってしまうケースは少なくありません。

特に会社の規模が大きくなるとこの傾向は強くなり、ジョブディスクリプションを入念に作成しても、応募者が集まらなくなります。 新卒採用だけでなく中途採用まで難易度が高まってしまうのであれば、本末転倒といわざるをえません。

注意点3.職務がなくなるリスクがある

ジョブ型雇用では仕事の範囲を限定するので、職務がなくなってしまうと社員の役割が消滅してしまいます。仕事がずっと存在していればよいですが、世の中の移り変わりが激しい現代では、現在の職務が10~20年後に存在していない可能性もありえるでしょう。

たとえば自動車業界の例が参考になります。自動車業界では、自動車エンジンの設計という職務があります。

あるとき自動車業界は、電気自動車に切り替わるという風潮によって、エンジンに関するエンジニアの職務を失ってしまう恐怖にさらされました。

電気自動車の製造では、エンジンがモーターに、ガソリンタンクがバッテリーに、燃料の配管がケーブルにかわるなど、仕事の内容が急激に変化します。

現代でいえば飲食業が、自動車業界のような時代の変化にさらされているといえるでしょう。新型コロナウィルスによって各社が新たなチャレンジをしなければ生き残れない現状に陥っています。

今後、フードデリバリーやフードトラックなど配送に注力する企業が増え始め、ホールで給仕していた人たちの仕事が減っていくと考えられます。

サービスの質が高い、あるいは料理の単価が高い飲食業であれば生き残れる確率は高いといえますが、専門性を要しない仕事はなくなってしまう可能性が高いです。

このように専門スキルをベースにしている業界であれば、ジョブ型雇用が適切かもしれません。 しかし、新卒に専門スキルを求めるのは酷といえるでしょう。ましてや不確実性の高い現代において、専門スキルを極めることは職務を失ったときのリスクを高めることにもつながります。

個人や企業がジョブ型雇用を導入するには?

成果主義を貫くのであればジョブ型雇用を導入すべきとの論調がありますが、一概に正しいとは言い難いです。

というのも、自分に適した仕事を見つけるには、およそ10年の期間が必要になると想定されるからです。

たとえば24歳で会社に入った社員が、40代になって人事部に移動して自分に合った仕事に出会うというケースがあります。この場合は、会社に入ってから20年という期間を経て天職に気づいた例です。

人事担当者の視点からも、自分の得意分野や経験スキルを活かせる仕事に出会えるのは、30代では稀だといわれています。

会社の主力である30代40代は、それまで培ってきた仕事経験をもとに、あっている職務を見つけるタイミングです。

その際に個人がジョブ型雇用によって転職を考えるのであれば、本当に次の職務が将来をかける価値があるのか、見つめ直す必要があります。

企業であれば、ジョブ型雇用に切り替わったとき、現在働いている社員の仕事を保障できるのか、よく検討することが大切です。

ジョブ型雇用とメンバー型雇用の併用がおすすめ

ジョブ型を導入するのであれば、新卒採用を停止しないと制度が矛盾を起こす可能性は高いといえます。現在の日本の雇用形態をふまえても、完全なジョブ型雇用を採用することは厳しいでしょう。

企業がジョブ型雇用で成果を上げるのであれば、社員が時間をかけて適性を見抜いていけるよう、はじめにメンバーシップ型の働き方を推進し、途中からジョブ型の働き方に切り替えることが重要です。

あるいは、会社の中でしか通用しないスキルを前提としたメンバーシップ型の職務設計を行う手もあります。

生物の多様性の観点からも同様であり、人間が長く生き残ってこれたのは変化に対応できたからだといわれています。

ビジネスの世界では強い企業が生き残るのではなく、変化に対応できた企業が生き残れるという説もあります。

人事制度も同じです。片方に偏ってしまうと脆弱な企業になってしまい、将来変化が起きたときに対処できない危険性があります。

最近、この危険性についての議論が深く行われていません。ステレオタイプな形でジョブ型がもてはやされているといわざるをいない状況です。 過去にジョブ型を導入してうまくいかなかった企業は決して珍しくありません。ジョブ型雇用を導入するのであれば、経験者の意見を聞いたうえで体制を整えることをおすすめします。