マネジメント力を向上したいとき、目標設定に関して忘れがちなことがあります。ポイントをはき違えると、目標を正しく達成できません。今回は、マネジメント力を向上させるときの目標設定について、大事なポイントを解説していきます。
管理職のマネジメントスキルは向上できる?
企業の管理職はマネジメント力を高めるために研修やコーチングを受けています。時代とともに働き方も変化しており、マネジメントスタイルを変更する必要が出ているからです。
基本的に研修やコーチングを受ける管理職は実績があるだけでなく、真面目な方が多くなっています。
部長や課長クラスであれば50歳を超える世代です。中には退職も近づき、新たな努力をする必要性を感じない方もいるかもしれません。
しかし、マネジメントに課題はつきもので、試行錯誤して自分の能力を高める必要があります。そもそも管理職はマネジメントスキルを向上できるのでしょうか?
人間は年齢に関係なく成長できる
人間は何歳になっても成長する生き物であり、成長の可能性は年齢に関係なく開かれています。人事の専門家によると、成長するには仕事やマネジメントを超えて、人間としての姿勢が大切です。
謙虚な人は勉強家であり、他者から意見を聞くことをためらわないため、何歳になっても成長します。
大企業の社長であっても同様です。周囲の方をまるで先生のように尊敬し、真剣に話を聞く社長もいます。
50代の部長・課長クラスの管理職も当然成長できるのはもちろん、マネジメントスキルも向上できます。
マネジメントスキルとマネジメント・サーベイの関係
管理職としてのマネジメント能力を向上させるには、データ分析が一般的です。代表的な調査は、マネジメント・サーベイです。
上司のマネジメントスキルを調べるための質問が複数あり、その回答結果をもとに改善案を導き出します。
調査は回答件数が多いほど客観的なデータになり、部下が感じていることは基本的には正しいことが多いです。
評価には主観が含まれる
ただし、あくまでも調査の結果は、部下の主観にもとづいて行われている点に注意してください。つまり、同じことを同じように遂行しても、部下が異なれば調査結果に違いが生じます。
人間は興味深いことに、自分と違うタイプの人間を基本的に理解できない生き物です。少しでも部下と管理職の基準が異なると、スコアは下がります。
たとえば、責任感や信念が強い人でも必ずしもスコアが高いわけではありません。中にはパワハラを行っている人とスコアが変わらないこともあります。
感情と事実を切り離して正確に判断できる部下もいますが、仕事の流儀が違うと調査結果に思いを反映させてしまいがちです。つまり、客観化しようとしても限界があり、多少の主観が結果に含まれます。
調査結果を過信してはいけない
調査結果を問わず、それぞれの管理職は過去の功績をもとに選ばれているのは事実です。会社から今後の功績を期待されているのは間違いありません。
あくまでも数値は正確ではなく、一つの指標です。
したがって、正しくても理解を得られずにスコアが下がる、あるいは、誤解によってスコアが上がるケースもあるかもしれません。いずれにせよ、部下が自分にくれた評価であり、自分と切り離して考える必要があります。
事実、マネジメント・サーベイの結果を単純に改善しても、うまくいかないことがほとんどです。そもそも、調査結果に書いてあることは難しいことではありません。
たとえば、職場の雰囲気に対する配慮や、わかりやすい指示の実行などです。部長や課長クラスの実力を持っていれば、努力で改善できる内容がほとんどでしょう。
つまり、結果よりも大切なことを見落としている可能性があります。
マネジメントスキルを改善できない理由
マネジメントスキルの向上にあたって、すべての課題が難しいわけではありません。なぜ管理職は改善できずに、低い評価を受けてしまうのでしょうか?
考えと行動が一致していない
多くの管理職が掲げる目標は、「部下が発言しやすい環境を整える」ことや、「会社の方針をわかりやすく部下に伝える」ことなどでしょう。
全部不適切であり、継続できる可能性は低いといえます。一見、部下や組織に配慮した理想的な目標設定に見えます。なぜ、不適切なのでしょうか。思い浮かぶ以上、課題としては誤っていないかもしれませんが、言ってみれば当たり前の内容です。
ところが、現実的には達成できていません。つまり、頭で考えている内容と行動がずれているのです。
恐怖で行動がブロックされている
部下の話をよく聞くことや、自分の意見を表明することなど簡単です。にもかかわらず、実施できないのは、どこかで無意識に行動をブロックしている可能性があります。
その裏には、恐怖の感情が潜んでいるケースが少なくありません。部下から嫌われたり、仲間外れにされたりするのではないかと、管理職であっても恐怖を感じてしまうのでしょう。
人間にとって恐怖は大事な感情です。太古の昔から生命の危機から逃れるために必要とされ、現代でも本能の名残として残っています。
マネジメントスキルの正しい目標設定
本能を克服するのは難しいかもしれません。では、どのように目標設定を行えばよいのでしょうか。
自分にメリットがある目標を立てる
本当に行動を起こすときを考えてみてください。多くの場合、自分にメリットがあるはずです。メリットを実感できないと、頭で考えていても実施できません。
当然、理想的な目標を設定しても、自分のやる気がおきなければ達成できないでしょう。
したがって、部下や組織のために目標を設定しないようにしてください。自分にとって関心が薄く、本音では重視していないからです。
マネジメントスキルを改善したいのであれば、自分にメリットがあることを目標として記載しましょう。
メリットが目標達成の推進力になる
自分のことばかり考えるのは気が引けるという方もいることでしょう。部下や組織を根本に考えてきた管理職であれば、なおさら違和感を持つかもしれません。
ですが、管理職も人間です。事実、真剣に取り組めていないから課題が生じています。
あらためて、部下に仕事を任せたい理由を考えてみてください。部下のためではなく、自分の時間を増やしたいことが本音ではないでしょうか。
時間が増えれば、子供と遊ぶ時間や、奥さんの家事を手伝う時間も確保できるはずです。自分が感じるメリットが推進力となり、目標達成を実現させてくれます。
自分の幸せをベースに組織を発展させよう
管理職にも自分の幸せを願う権利はあります。管理職として組織に配慮することは大切ですが、自分が人生の主人公であることを忘れてはいけません。
自分が得られるメリットを考えて目標を設定することが、マネジメント能力を改善する近道です。継続的に続けていくと、管理職としての能力が伸びていき、最終的に素晴らしいチームが作れるようになります。
管理職で奮闘している方は、あらためて目標設定の在り方を振り返ってみてはいかがでしょうか。