セブンイレブンと「すかいらーく」は私たちの食生活をサポートする身近な企業です。ほとんど同じタイミングで人事制度を見直すことになり、注目されています。なぜ、人事制度を見直す必要が生じたのでしょうか。セブンイレブンと「すかいらーく」の人事制度改革から読み取れる時代変化とともに、ジョブ型人事制度について解説していきます。
セブンイレブンと「すかいらーく」に関する人事制度改革のポイント
セブンイレブンと「すかいらーく」が人事評価を見直すきっかけは、いずれも新型コロナウイルスによる影響が関係しているのでしょう。それぞれの人事制度改革についてポイントを解説していきます。
セブンイレブン
“コンビニエンスストア最大手セブン―イレブン・ジャパンは売上高で評価していた人事制度を見直す。オーナー支援など40項目の業務プロセスを重視する。本部主導の画一的な店舗戦略を改め、地域特性に合う店づくりを促す。“
今までは売上で評価していた人事制度でしたが、40項目の業務プロセスを評価することになりました。セブンイレブンの評価制度は、1973年の創業から変わっていませんでした。初めて抜本的な改革に踏み切ったといえます。
※引用
セブン、人事評価で脱「売上至上」 店舗支援3300人
(日本経済新聞)
「すかいらーく」
「すかいらーく」では、売上高に偏重していた基準を見直すことになりました。追加された評価基準は下記の通りです。
“店舗の責任者などが新型コロナの感染予防策に積極的に取り組むほか、料理宅配で必要な数の配達員の確保”
社会情勢にあわせた対応をした場合に評価する仕組みです。おそらく、新型コロナウイルスの感染拡大によって客足がもどらず、評価体制を変えざるを得なかったのでしょう。
※引用
すかいらーくHD、社員評価基準見直し 売上偏重を転換
(日本経済新聞)
セブンイレブンと「すかいらーく」の人事制度改革が示す時代変化
セブンイレブンと「すかいらーく」は両者とも、需要構造の変化に応じて人事制度を見直すことになりました。それぞれの人事制度改革が示す時代変化を考察してみましょう。
時代変化1.売上至上主義の崩壊が迫っている
これまで日本で浸透してきたメンバーシップ型(正確にはロール型・ポジション型)は役職に人材を割り当てる働き方です。
調整や根回しなしでは機能せず、まさにプロセスが重視される働き方といえるでしょう。そのため、大企業の生産性もプロセスをベースに成り立っているといっても過言ではありません。
もちろん、プロセス重視の働き方だけでは成り立たないビジネスもあり、会社によっては売上至上主義で事業を展開することもあります。
しかし、新型コロナウイルスの発生によって、突然にして消費者動向が変わり、売上至上主義が機能しなくなりました。
実際に、セブンイレブンや「すかいらーく」の人事制度改革からも、売上至上主義の崩壊が迫っていることを感じ取れるでしょう。
時代変化2.新ビジネスが求められるようになった
今までは店長や店員が売上をあげればビジネスが成り立っていました。
しかし、新型コロナウイルスによって消費者動向が変化したのであれば、同じ方法は通用しません。新しいビジネスを始めないと生き残れなくなりました。
その点、プロセスを評価しないと、モチベーションが湧かず、新しいビジネスは生み出せません。セブンイレブンと「すかいらーく」は、先を見据えて動き出したのでしょう。
全日本空輸がスタートした新ビジネス
新しいビジネスについてイメージを湧かせるには、全日本空輸の取り組みが参考になります。新型コロナウイルスが発生する前に、全日本空輸はエアバスA380型機を購入しました。
しかし、感染拡大によって欠航を余儀なくされるようになります。当然、機器や設備の維持費用が発生するので、そのまま放置するのは望ましい状態ではありません。
そこで全日本空輸は、エアバスA380型機を遊覧飛行に活用し、2020年12月には「アーリークリスマスフライト」を実施しました。
夜景を楽しめる時間にフライトし、機内では特別な食事を提供しています。参加者は空の上で、贅沢なクリスマス気分を味わえたに違いありません。
遊覧飛行では、アルコール消毒といった安全対策を行っています。海外の空港に直接降りないことから、利用者も申し込みしやすいのでしょう。
※参考
ANA、A380「フライングホヌ」でクリスマスフライト 上空から夜景鑑賞
(株式会社トライシージャパン)
ジョブ型人事制度だけでは通用しない
ジョブ型人事制度では、基本的にジョブディスクリプションシートに記載された仕事をすると評価されます。どちらかといえば結果主義です。
しかし、結果だけ追い求めると、まったく機能しなくなるリスクがあります。最終的に、プロセスまで思案しなくてはならないでしょう。
このことは、セブンイレブンと「すかいらーく」における人事制度の変更からもわかります。
また、ジョブ型人事制度はメリットだけでなくデメリットもあり、安易に導入するのは危険です。たとえば、導入を進めるにあたって、体制を整えるために過剰な労力を強いられます。
特にジョブディスクリプションシートは、職務を詳細に記述しなければならず、作成や編集、保守などの作業に負担がかかります。経験した人事担当者であれば、その苦労はわかるでしょう。
セブンイレブンと「すかいらーく」の人事制度改革を見る限り、ジョブ型だけでは通用しないことに気付いているように見えます。
どちらの企業もジョブ型人事制度に近い方針を採用してきたので、すでに課題が見えているのでしょう。
ただし、プロセスを評価するといっても、時代の変化が急激で評価すべき行動を予見しづらい状態です。
つまり、試行錯誤の状態で評価軸を設定しなければなりません。セブンイレブンと「すかいらーく」の経営者や人事担当者は、力量が試される場面といってよいでしょう。
ジョブ型にこだわらず時代に適した人事制度を導入
以上、セブンイレブンと「すかいらーく」の人事制度に関する動向をお伝えしました。
現在の日本ではジョブ型について注目されていますが、セブンイレブンと「すかいらーく」は、反対にメンバーシップ型の働き方に着目しています。
日本では、チームワークを重視したメンバーシップ型の働き方が根付いており、他者貢献の文化が育まれています。
しかし、ジョブ型は自分の業務を遂行する働き方なので、メンバーシップ型のメリットが失われてしまうケースがあります。最悪、現在より条件のよい仕事があれば、社員に転職されてしまうリスクもあります。
つまり、やみくもにジョブ型人事制度を求める風潮は危険です。ジョブ型にこだわるのではなく、時代の流れに応じて柔軟な人事制度を追求することが重要だといえるでしょう。
その点、セブンイレブンや「すかいらーく」は、日本の風潮に惑わされず、時代にそった流れで動き出しています。
時代に適した人事制度を導入できるよう、大手各社の動向を把握しておきましょう。
こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご覧ください。