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日立製作所のジョブ型動向は?方針や募集職種を徹底分析!

カテゴリ: 一般公開

日立製作所は、2021年4月からジョブ型人事制度を導入する方針を定めていました。

国内で働く16万人をはじめ、世界中の従業員30万人を対象としてジョブ型に切り替える計画です。導入にあたって想定されている職務記述書の数は300~400種類になるといいます。

日立はジョブ型に関して先進的な試みをしており、経営者や人事担当者にとっては参考になる事例です。

しかし日立にとっては、先陣を切るがゆえの苦しさがあると容易に想像できます。前例がないので、自社で新たな局面を乗り切っていかなければなりません。

日立はどのようにジョブ型移行を推進しているのでしょうか。今回は日立製作所のジョブ型移行の動向について解説していきます。

日立が考えるジョブ型の方針

ジョブ型の動向を知るために、日立製作所のホームページで採用・キャリア教育に関する項目を確認してみましょう。すると、新卒採用やグローバル採用、経験者採用、障がい者採用、キャリア教育、ジョブ型人材マネジメントという項目がありました。

ジョブ型人材マネジメントという項目では、日立が考えるジョブ型の方針が示されています。

方針1.働きやすさと働きがいを追求

私たちは学校を卒業してから、会社や社会と関りながら人生を設計しなければなりません。

内閣府の「令和2年版高齢社会白書」によると、日本人の平均寿命は2065年に、男性が84.95年、女性が91.35年になると予想されています。

※参考
令和2年版高齢社会白書
(内閣府)

平均寿命の増加が予想される現代において、人生における働き方をあらためて見つめ直す必要が生じています。

日立の考えによると、時代は「企業戦士の時代」→「ワークライフバランスな時代」→「個の時代」に移り変わってきている、とされています。

企業を優先する時代が終わり、企業が社員のためにできることを考える時代になっているようです。その点をふまえ、日立では働きがいと働きやすさの両方を追求しています。

働きやすさと違って、働きがいは人によって異なります。誰でもできる仕事であれば働きがいを感じないでしょう。その点、日立はジョブ型で社員の個性を活かし、働きがいを持ってもらおうとしています。

方針2.社員と仕事の結びつきが強い

メンバーシップ型は、具体的な仕事を提示する前に入社してもらう制度です。その一方で日立のジョブ型では、会社が社員に仕事を提示したうえで、会社に貢献する専門家を募集します。

欧米で主流とされているジョブ型の通りに、社員と仕事の結びつきが強い点は変わらないのでしょう。

ただし、日立では仕事にさまざまな種類があることも暗示しており、完全に職務を限定していないようなニュアンスも読み取れます。おそらく、メンバーシップ型の要素も残しているのではないかと思います。

※参考
いい「働き方」って、なんだろう。
(日立製作所)

日立製作所が募集している職種

人事コンサルタントは、ジョブ型の進行度を経験者採用の情報から読み取ります。というのも、ジョブ型は職務範囲を限定する雇用形態です。反対にメンバーシップ型は職務を限定しません。

つまり、日立が本当にジョブ型であれば、採用にあたって職務が定義されているはずです。早速、現在募集中の職種を確認してみましょう。

ジョブ型人財マネジメント推進に向けた企画立案業務 コーポレート(人財統括本部)

日立製作所の組織文化転換に向けた人事勤労諸制度を企画する職種です。

募集要項を大まかにみると、職務内容と勤務地が明記されています。まさにジョブ型の定義を連想させる限定です。ちなみに、コーポレート(人材統括本部)というのは、本社勤務をさしています。職務内容に含まれる項目を確認してみましょう。

【項目1.募集背景、ミッション】

まず、募集背景やミッションが記載されているのが特徴です。募集背景やミッションは、職務定義書で必ずしも必要ではありません。おそらく、ジョブ型の動向を理解しやすいように記載しているのでしょう。

【項目2.職務概要】

職務概要では、従業員の意識醸成に関する施策の立案と実行が記載されていました。ジョブ型の意図を社員に伝える内容であることから、社内にはジョブ型への移行に戸惑っている人がいると推測できます。

また、日立各社に対するジョブ型転換施策の実行支援も要求されています。日立には子会社がたくさんあります。国内海外を問わずに人事制度を統一しなければなりません。

海外の場合は当然ですが、国内の小規模企業にジョブ型を浸透させるのは、骨が折れる仕事です。グループ全体に浸透させるには4,5年かかるかもしれません。

そのほか、労働組合交渉の対応についても記載があります。ジョブ型になると報酬制度が変わり、場合によって従業員の不利益変更につながるリスクがあります。労働組合は労働者の生活を守る仕事なので、当然交渉をしないといけません。

【項目3.携わる事業・ビジネス・サービス・製品など】

グループ各社における人事勤労担当者との連携をベースに、ジョブ型転換を推進する旨が記載されています。

日立グループ内の活動だけでなく、コンサルティングファームや他社の人事担当者と交流して、HRとしての見識を広める機会があることを示しています。

ジョブ型への移行に関する事例はまだ日本では少ないです。そのため、日本でジョブ型を定着させるには、他社から情報を収集したり、コンサルティングファームと意見交換をしたりして、日立にあった転換方法を考えていく必要があるのでしょう。

【項目4.仕事の魅力・やりがい】

先頭に立ってジョブ型移行を推進できる点が魅力であるとのことです。たしかにジョブ型への移行業務を経験すれば、移行を検討する各社から引っ張りだこになるでしょう。

この魅力は、将来の転職に役立つメリットだとわかります。メンバーシップ型であれば、会社に残って業務を継続してもらう方針をとるので、ふさわしい内容ではありません。

社員の人生が会社よりも優先されているように読み取れるのではないでしょうか。

募集要項に転職に役立つ魅力を記載する方法は大胆です。しかし、社員が生涯やりがいを持って働けるようにするためには、検討の余地があるかもしれません。

【項目5.キャリアパス】

キャリアパスの項目で特徴的なのが、全社の人材部門を対象としてローテーションの可能性が記載されていることです。

ジョブ型は仕事を限定した働き方であるため、ローテーションという言葉に違和感を持つ方もいるかもしれません。

しかし、ローテーションも含めて職務を定義しているので、ジョブ型のルールにもとづいています。最初に将来の可能性や移動の範囲などを明確にしていれば、ジョブ型に該当するのです。

このように日立の人事職に関する募集要項を見ると、人事の細かい業務というよりは人事全般を任せる内容であり、職務が広く定義されていました。

※参考
ジョブ型人財マネジメント推進に向けた企画立案業務
(日立製作所)

結論「社外・社内ともにジョブ型の推進が着実に進む」

日立では、知財法務/商標業務に関する業務も募集されていました。知財法務のコンサルティングや商標関連業務をメインとしていますが、ライセンス・渉外関連業務とM&A関連業務まで将来的に任せられる可能性も定められています。

この点もふまえると日立のジョブ型には、将来を見据えた広い職務定義に特徴があることが分かります。

日立の中途採用では以前から、同様の内容で職務定義をしていたとも考えられます。
あえて採用ページで公開するのは、社外向けにメッセージを発信するとともに、社内向けにメッセージを込める狙いがあると読み取れます。

というのも現在、日立の社内にはメンバーシップ型で採用された社員もいるからです。ジョブ型に変更する方向性を示し、目指してほしいプロの役目を知ってほしいのではないでしょうか。

募集要項の内容を分析すると、日立製作所のジョブ型は着実に進んできている印象です。今後も本社を中心にグループ会社の改革に乗り出していくことでしょう。



こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご覧ください。

日立のジョブ型どうなった?

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