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伊藤忠商事の人事制度を徹底解説!方針や目的、評価体制は?

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2020年9月、世界的投資家として知られるウォーレン・バフェット氏が、日本企業に巨額の出資をしたことが報道されました。その日本企業とは伊藤忠商事です。今回は伊藤忠商事の人事制度について詳細を解説していきます。

伊藤忠商事の人事制度

“アメリカの著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは8月30日、日本の5大商社の株式をそれぞれ5%超まで取得したことを発表した。”

※参考
バフェット氏が5大商社に価値を見出した理由
(東洋経済ONLINE)

バフェット氏は、日本の5大商社を全て購入した人物として知られており、5社の保有時価は約6,000億円とされています。

商社とは、日本特有の世界的に珍しい企業形態であり、外国人から注目されやすい傾向があります。そんな商社の中でも特に出資額の高い商社が伊藤忠商事であり、保有時価は2,242億円です。

伊藤忠商事は、以前と比べて急激に業績が伸びてきました。世界的に注目される企業の人材育成制度はとても参考になります。早速、伊藤忠商事の人事制度を確認していきましょう。

方針・基本的な考え方

※参考
伊藤忠商事 人材育成
(伊藤忠商事株式会社)

伊藤忠商事の人材育成の基本は、下記の方針・考え方で成り立っています。

・OJTによる業務経験付与が中心
・評価とフィードバックで成長意欲を醸成
・研修による知識・スキル習得で補強

伊藤忠商事の方針は心技体をベースにした考え方だといえます。武道において、心技体はカラダそのものを指しますが、人事制度では経験を指します。

ちなみに、一般的に成長に与える影響は経験が7割、スキル研修が2割、目標設定が1割といわれています。つまり、OJT(現任訓練)が人材を成長させるのに一番適切だということです。

ジョブ型人事制度では、仕事が決まると給与が決まります。ベースアップや定期昇給の概念はありません。また、職務の範囲が広がり、次のジョブグレードに移行すると、給与があがります。基本的にはフィードバックはありません。

しかし、人間は自分の欠点に気づけず、他者から指摘してもらうことで成長できます。意識してフィードバックを実践しないと、上司のフィードバック能力も育まれず、会社としての成長は望めないでしょう。

その点、伊藤忠商事はフィードバックをする方針をとっています。

研修でビジネススキルを習得させて、実務経験の場でフィードバックすることは、当たり前かもしれません。しかし、当たり前のことを実践するのは、意外と難しい傾向です。

伊藤忠商事の人事制度では、人材育成の基本的な考え方が反映されているとわかります。

目標

取り組む課題として、社員の持続的な能力開発を掲げています。会社としてのコミットメントは下記の通りです。

“伊藤忠商事の企業理念を継承しながら、常にニーズに合わせて商いを変革できる「マーケティングのプロ」育成に向け、マーケットインの発想を持ち、グローバルベースでの研修プログラムを開発し、また研修プログラムを活用し優秀な人材を継続的に輩出します。”

ニーズにあわせて商いを変革できる人材育成を目指しています。

ジョブ型人事制度では、仕事に人を割り当てる仕組みであり、仕事の範囲が決まると柔軟性が失われてしまうのが難点です。その点、伊藤忠商事は「人が仕事を作る」という理念を持っており、伊藤忠商事の人事制度は柔軟なイメージをまとっています。

体制・システム

伊藤忠商事は、2007年からグローバル視点で人事戦略を推進しており、全世界で海外収益を生み出す優秀な人材を育成するために、タレントマネジメントシステムを構築しています。

タレントマネジメント機能のサイクルは下記の通りです。

①優秀人材の選別
②CDP(キャリア開発計画)
③育成・活用・登用
④評価(成果・コンピテンシー)

シンプルですが、力強い運用サイクルです。創業時から160年以上受け継いできた理念や価値観を採用基準や評価・育成制度に反映させています。

研修体系

※出典
人材育成 研修体系
(伊藤忠商事株式会社)

内定者から始まり、新入社員研修や4年目研修、プレマネジャー研修、最終的には新任役員研修までの流れが体系化されています。

横軸に研修の流れを見ていくと、役割等級制度に近いことがわかります。

英語では、ミッション・グレーディングシステムと呼ばれ、日本に根付いている職能給とジョブ型人事制度における職務給の中間にあたる制度です。

この制度では、あまり細かく仕事を定義せず、新入社員や課長などに応じた役割を決めて、それに対する給与決めます。

実績

伊藤忠商事における2019年の研修費用は、正社員一人当たり約27万円です。

2020年に産労総合研究所が約3,000社を対象に行った教育研修費用の実態調査によると、2019年度における一人当たりの教育研修費は3万5,628円でした。

伊藤忠商事は相場の約7.6倍の研修費用をかけていることがわかります。研修費用を公表している企業はあまり多くはありません。それほど伊藤忠商事は人材育成に注力しているのでしょう。

※参考
2020年度 教育研修費用の実態調査
(株式会社産労総合研究所)

人事評価制度

伊藤忠商事は適材適所の方針を掲げています。能力・適正・希望を把握し、「配置・異動計画」を作成するとのことです。

つまり、一方的な適材適所を実施しないことを示しているのでしょう。職務調査で現在の仕事を評価し、能力評価(総合)によって固定給を決めています。

また、伊藤忠商事は人事評価において、自己分析結果と部下監察結果の差異をフィードバックする体制をとっています。

おそらく360度フィードバックの方法に該当するのでしょう。これによって自分の開発課題を明らかにする仕組みです。他者の意見を成長につなげるのは当たり前ですが、仕組みが整っている会社は少ないでしょう。

変動給についてはボーナスを示していると考えられます。個人業績の評価や優良組織の認定などが評価につながっています。

目標管理制度(MBO)と人材アセスメントの流れ

目標管理制度では、4~5月頃に目標を設定し、その結果について10~11月(中間)と翌年3~4月(期末)にレビューする流れです。

また、人材アセスメント制度では、9月頃に能力評価を実施し、11月頃にキャリア・ビジョンシートを作成します。その後、12月~翌年1月にかけて上司との面接や評価のフィードバックを行う流れです。

翌年の人材配置に間に合うよう、9月から能力評価を実施しているのでしょう。新しい組織を固めていく王道のパターンです。

キャリア支援について

伊藤忠商事のカウンセラーは、全員がキャリアコンサルタントの国家資格を取得しており、各社員のキャリア設計を実施しています。

チャレンジキャリア制度については、いわゆる社内公募制度です。本人と上司の了解を得たうえで異動を実行しています。

また、若手総合職に対してローテーションの推進も行っています。原則として8年目までに3職務以上を経験させることが前提です。

さまざまな職務を経験して、自分に向いていることを理解しないと、ジョブ型人事制度は導入できません。伊藤忠商事はジョブ型人事制度ではありませんが、天職を見つけやすいようにバックアップしていると考えられます。

ジョブ型雇用を検討する前に人事の基礎を見直す

伊藤忠商事の人事制度は、基礎的な取り組みで成果をもたらすモデルケースでした。当たり前のことを完璧に継続している点に驚いた方もいるのではないでしょうか。

結論として、人材育成のためにあえてジョブ型人事制度を採用していないこともわかりました。

世間では、ジョブ型人事制度が注目を集めています。しかし、ジョブ型人事制度にはメリットだけでなくデメリットもあります。日本では、ジョブ型人事制度の成功事例ばかりが紹介され、失敗事例についてあまり注目されていません。

導入すれば100%うまくいく人事制度は皆無です。したがって、やみくもにジョブ型人事制度を導入するのはおすすめできません。

伊藤忠商事のように、ジョブ型人事制度を導入しなくても世界的に評価される企業はあります。

ジョブ型人事制度を導入する前に、一般的な人事制度の基礎を再確認することが大切です。

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