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メンバーシップ型雇用から一番遠い国のお話

カテゴリ: 会員限定
Team of business people stacking hands

ジョブ型とメンバーシップ型は、人事業界において議論の的になっています。日本では、特にジョブ型が注目されつつありますが、世界的には正しい風潮なのでしょうか?

ジョブ型の導入に関する是非を考察するために、実は社員の仕事に対する熱意が重要な指標になります。今回は専門機関の調査結果をもとに、日本の人事制度に関する論調を考察していきましょう。

日本人の社員に熱意はあるか?

アメリカのギャラップ社は、米国最大の調査企業です。ギャラップ社は、世界各国の企業に対して、仕事の熱意度を調査しました。

対象となった国は139ヶ国です。果たして日本は何位だったのでしょうか。ちなみにアメリカでは、熱意あふれる社員の割合は32%でした。対する日本は、わずか6%だったとのことです。

結果として139ヶ国中132位となり、日本は最下位に近い状況でした。

※参考
働く人の幸福度をはかるたった12の質問 -日本企業は世界でも最下位レベル-
(PRESIDENT Online)

企業には、周囲に不満をまき散らす社員がいます。企業内で諸問題を生むと考えられている要素です。事故や製品の欠陥、顧客の喪失など、周囲に不満をまき散らす社員が必ず関与しているといいます。

日本では、周囲に不満をまき散らす社員の割合は24%であり、やる気のない社員に関しては70%に達していました。

総じて、日本の社員から熱意が失われていることがわかります。

日本の社員から熱意が失われた理由

なぜ、日本の社員から熱意が失われてしまったのでしょうか?過去をさかのぼると、日本の製品はよく売れており、世界的にも注目されていました。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本が世界で読まれるなど、ほかの国が日本の強みに興味を持っていました。

しかし日本は、時代の変化に対応せずに、同じ方針を継続してしまいます。

原因はさまざまですが、専門家の観点からすると、上司の存在が関係していると考えられます。昭和時代には、上司の指示に黙って従い、上司の背中を見て仕事を覚えるという風潮がありました。

高度経済成長期では通用しましたが、現在は通用しません。にもかかわらず、いまだに昭和時代の考え方は少なからず根付いています。

なぜなら、上司に育てられた部下は、同じ方針で部下を育てるからです。

そのため、仕事をしなければならない理由や、仕事によって成長できることなどについて、教えてもらえない状態が続き、社員の熱意が下がってしまったのではないでしょうか。

中小企業こそ熱意のない社員を雇ってはいけない

人事コンサルタントの立場からすると、中小企業にとって採用が一番大事です。熱意のない社員を抱える事態は避ける必要があります。

少しでも会社にあわないと思ったら、落とす方針を取ったほうがよいでしょう。なぜなら、中小企業は社員とその能力に対する依存性が高いからです。

大企業のほうが、採用は重要だと思う方もいるかもしれません。しかし実際のところ、大企業は仕組みと設備投資で利益を生み出しています。大企業の給与が高いのは、社員の能力が高かったり、頭がよかったりするからではありません。

その一方で中小企業の社員は、大企業よりも仕事の範囲が広くなり、責任も重くなります。自分たちが売り上げを出し、新規顧客を獲得しなければなりません。スキルや労力もそれに応じて必要になります。

しかし、大企業は同じことをしなくても給与がもらえます。そのため、大企業で集客力がある人やマーケティング力がある人は意外と少ない傾向です。

反対に中小企業では、自分で顧客を開拓したり、マーケティングの勉強をしたりしないと、社員は生き残れません。したがって、中小企業こそ人材の存在感が増し、採用を見極めなければなりません。

そのとき、優秀な社員を獲得し損ねるよりも、組織とあわない人材を採用するほうが危険です。一人の優秀な人材がいなくても他のメンバーでカバーできますが、間違った人材を取ると周囲に悪影響を及ぼします。

まさに中小企業において、熱意を持たない社員の見極めは、死活問題といえるでしょう。

熱意のある社員を育てるポイント

では、熱意のある社員はどのようにして生まれるのでしょうか?

仕事への熱意を示す指標であるエンゲージメント(会社に対する愛着心や思い入れ)を専門で調査しているThe ADP Research Institute(ADPRI)の研究結果によると、チームの力が従業員のエンゲージメントを高めるとのことです。

具体的には、チームの一員である人のほうが、チームの一員でない人よりも倍以上エンゲージメントが高いことがわかりました。

熱意のある社員を育てるポイントを確認していきましょう。

まず、信頼関係がベースにあることです。人間は社会的な動物であり、さまざまな人間関係のもとで仕事をすることから、この点について理解しやすいでしょう。

次に、目配りを感じさせるチームであることです。チームメンバーの具体的な仕事や悩みなどを互いに気にかけている環境が大切だといえます。

そして、ともに学んで成長できる精神も重要です。一人では継続できないことも、集団に属することでモチベーションが湧くこともあります。

最後に、一緒に働くメンバーです。働く部署や会社などよりも、一緒に働く人物に影響力があります。

このように、エンゲージメントはチームに関する要素に左右されます。

メンバーシップ型から一番遠い国は日本だった

エンゲージメントを高めるには、良好なチームワークを構築し、仲間と一緒に働いて成長していくことが大切だとわかりました。つまり、メンバーシップ型であれば、おのずと社員の熱意が高まるはずです。

しかしあらためて、熱意に関する調査結果の順位を見ると、日本において熱意あふれる社員の割合は最も低いです。深く考えると、チームの大切さをないがしろにしていることが読み取れます。

日本はメンバーシップ型の働き方だといわれてきましたが、いつのまにかメンバーシップ型から最も遠い国になってしまったのです。

たしかに日本では、官僚主義といった独自の言葉が見受けられます。世間をにぎわせた銀行を舞台にした某ドラマを見てもわかるように、部門を超えると敵対してしまうこともあるようです。

その一方でアメリカでは、助け合う文化やお互いの成長にコミットする姿勢を重視した企業が登場しつつあり、成長を遂げています。つまり、ジョブ型ではなくメンバーシップ型の長所が注目されています。

年功序列式の賃金制度がよかったとはいいませんが、日本は世界でトップクラスになった時期もあり、過去の日本の働き方から継承したほうがよい点もあります。

ところが日本は、メンバーシップ型ではなくジョブ型をもてはやす論調が見受けられます。今回紹介した調査・研究結果を考察すれば、違和感を持っていただけるのではないでしょうか。

助け合いの文化や成長しあえる環境を整える

結論として、メンバーシップの大切さを一番軽視しているのは日本だといえます。そのため、日本のエンゲージメントは低くなってしまったのではないでしょうか。

このままジョブ型重視の風潮に目を奪われて、メンバーシップ型の長所まで軽視すると、ますます社員の熱意が失われてしまう可能性があります。

社員の生産性を高めたいのであれば、ジョブ型の導入をすぐに検討するのではなく、助け合いの文化や成長しあえる環境を整えることから始めてはいかがでしょうか。



こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご覧ください。

「メンバーシップ型雇用から一番遠い国のお話し」

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