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メンバーシップ型はオワコン?定義やアップデートする方法を解説!

カテゴリ: 会員限定

ジョブ型雇用が注目されるにともない、メンバーシップ型が軽視される風潮も見受けられます。メンバーシップ型は、現代の日本において、本当に不必要になったのでしょうか。

正確な議論をするには、まずはメンバーシップ型の定義に立ち返る必要があります。今回はメンバーシップ型の定義を振り返りながら、ジョブ型を含め理想の雇用形態を探っていきます。

メンバーシップ型の定義

多くの日本企業は、自分たちの働き方をメンバーシップ型だと認識しています。しかし、メンバーシップ型の定義を正確に理解している企業は、少ないといえるでしょう。

メンバーシップ型は、濱口桂一郎氏(労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長)が名付けたことが知られています。

濱口氏によると、メンバーシップ型の定義は下記の通りです。

“職務も労働時間も勤務場所も契約で限定されておらず、無限定、すなわち使用者の命令でいくらでも変えられてしまう雇用のあり方を、企業という「共同体」のメンバーになるという意味で「メンバーシップ型」と呼び、日本以外で一般的な職務も労働時間も勤務場所も限定される「ジョブ型」と対比した。”

メンバーシップ型の定義のポイントをまとめると下記の通りです。

・職務と労働時間、勤務場所が限定されていない
・使用者の命令で仕事内容や労働環境を変更されてしまう

つまりメンバーシップ型は、職務と労働時間、勤務地を限定せず、会社側に働き方の決定権をゆだねる代わりに、正社員というポジションを獲得できる雇用形態です。

年功序列型人事制度や、実力主義人事制度などは一切関係ありません。

メンバーシップ型に関係する正社員の意味

メンバーシップ型の理解を深めるために、正社員の意味についても考えてみましょう。正社員の意味を知るには、パートタイム労働法第九条が参考になります。

“(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。”

※引用
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
(e-Govポータル)

ポイントは、「当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの」という箇所です。通常の労働者は正社員をさします。

要するに、正社員と同じような仕事をしている短時間労働者がいれば、待遇面について差別してはいけないという旨が記載されています。

見方を変えると、正社員とアルバイト、パートの違いは、職務や勤務地に関する限定の有無なのです。

欧米の場合、フルタイムや無期雇用、直接雇用という3つの条件を満たすと正社員として扱われます。その一方で日本は、欧米と同じ条件に加えて、職務内容や労働時間、勤務地が無限定という条件を満たすと、正社員として扱われます。

つまり、会社に働き方の決定権をゆだねる社員が正社員です。そのような社員を雇う雇用形態がメンバーシップと呼ばれています。

メンバーシップ型の定義からわかるジョブ型の誤解

日本経済新聞では、三井住友海上がジョブ型を導入するという記事が掲載されました。

“MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険株式会社(社長:原 典之)は、2021年度から順次、ジョブ型を取り入れたハイブリッド型の人事制度への改定を行います。本改定では、目標管理・人事考課制度の見直しや高度専門領域を担う社員区分の新設など、求める職務・能力や達成すべき目標を明確にし、成果をより重視するジョブ型の要素を人事制度に導入します。”

※引用
三井住友海上、ジョブ型を取り入れたハイブリッド型の人事制度へ改定
(日本経済新聞)

メンバーシップ型の定義を知ったうえで記事の内容を見ると、あまりジョブ型と関係がないことがわかるのではないでしょうか。

職務や勤務地などを限定しないメンバーシップ型以外をジョブ型の定義だとしましょう。メンバーシップ型の定義は成果と関係がないことから、成果を重視するという要素はジョブ型とも関係が薄いと考えられます。

同社がジョブ型の定義を正確に把握していないわけではないでしょうが、ニュースを見た一般人は成果重視=ジョブ型だと勘違いしてしまう可能性があります。

メンバーシップ型をアップデートした雇用形態とは?

メンバーシップ型をうまくアップデートした雇用形態もあります。

それは、戦略的メンバーシップ型です。仕事の決定権を社員に与えつつ、終身雇用を前提に採用する制度です。

具体的には、仕事を選択するにあたって、従業員と会社が話し合って決めていきます。

業績評定や昇格管理を厳格にするために、職務定義書を使うこともありますが、あくまでメンバーシップ型がベースです。

戦略的メンバーシップ型にアップデートする方法

戦略的メンバーシップ型にアップデートをするには、とある職種が必要です。

社員の適性を見抜くための社内におけるキャリアカウンセラーです。

キャリアカウンセラーをうまく活用している会社の例として、伊藤忠商事が挙げられます。現在は、業界でトップを争うほどに成長している商社であり、アメリカの有名な投資家は2,000億円以上出資しました。

伊藤忠商事では、社内にキャリアコンサルタントの国家資格を保有する人材を登用しています。新入社員から組織長まで全社員に関して、キャリア相談をベースに適正をふまえた配置を進めるためです。

伊藤忠商事に限らず、人事部で社員のキャリア相談にのれる人材を育て、適材適所を実現できるようになれば、メンバーシップ型の利点を残しつつ人材配置を進められます。

今後、伊藤忠商事のような人事制度がスタンダードになってきてもおかしくはないでしょう。

戦略的メンバーシップ型も検討

メンバーシップ型の利点は、柔軟な人材配置や、長期的な人材育成などです。

その一方でジョブ型のメリットは、仕事が限定されるので、社員が専門スキルを伸ばしやすいことです。

どちらの雇用形態にも長所があります。メンバーシップ型とジョブ型の優劣をつけるのではなく、お互いの長所をうまく取り入れた人事制度が理想的です。

メンバーシップ型が通用しないからといって、ジョブ型にすればうまくいくわけではありません。

そこで、メンバーシップ型を戦略的にアップデートする方法が浮かび上がります。

特に日本の場合は、文化的・風土的にメンバーシップ型が根付いているので、ジョブ型に移行するよりも、戦略的メンバーシップにアップデートする方が馴染みやすい可能性があります。

このように、メンバーシップ型の定義を理解すると、働き方について生産的な議論が進められます。ジョブ型の導入を検討している企業は、今一度メンバーシップ型の定義に立ち返ってみてはいかがでしょうか。



こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご覧ください。

メンバーシップ型雇用をアップデートせよ

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