2020年8月、KDDIがジョブ型人事制度を導入したことで話題になりました。発表から半年ほどたった現在、ジョブ型への移行状況が気になる方もいるのではないでしょうか。今回は、KDDI版ジョブ型の動向について、募集職種の記載内容をベースに解説していきます。
ジョブ型の動向を確認する方法
ジョブ型人事制度の進展や動向を把握するには、会社の人事や採用情報を見ることがポイントです。ジョブ型は職務を限定する働き方であり、そのためには職務定義書を記載しなければなりません。
職務定義書は、社内だけでなく中途採用でも利用します。
新卒採用では、ポテンシャルを重視したうえで、長年かけて適性を判断し、生涯専念してもらう仕事を割り当てるのが一般的です。
一方で中途採用の場合、採用時点でスペシャリストを募集します。その点で、採用段階で職務定義書を用意しないと、必要とするスペシャリストを見つけられません。
KDDIは、KDDI版のジョブ型人事制度を目指していると公表しています。ジョブ型であれば、採用段階でも職務定義書を活用していると予想できるでしょう。
ただ、ホームページによっては、採用情報がどこにあるのかわかりづらい構造になっていることがあります。求職者からすると、トップページに採用情報がなければ、キャリア採用の募集がないと勘違いしてしまうかもしれません。
大企業では、動的なデザインでクオリティーが高く見えるホームページを設計していることがあります。
しかし、中途採用で貴重な人材と出会える機会を失うリスクがあるので、中小企業の方はマネしないほうが無難かもしれません。
KDDIが新人事制度のもとで募集している職種
※参考
KDDI キャリア採用 募集要項
(KDDI株式会社)
KDDIの企業情報から採用情報に進むと、新卒採用・インターンシップ・キャリア採用情報があります。ジョブ型の動向を知るために、キャリア採用の募集要項を確認してみましょう。
募集されている職種はコーポレートや営業、マーケティングサービス開発、Web、UI/UX、アプリケーションエンジニア(PM・SE)などです。具体的な職種の募集要項を参照していきます。
職種1.人事制度企画・推進担当
KDDIでは、ジョブ型人事制度への移行に伴う人事改革を企画・推進する職種が募集されていました。
【仕事内容】
KDDIにおける人事制度企画・推進担当の仕事内容は、「通信とライフデザインの融合」と「ワクワクを提案し続ける会社」をテーマとして、社員の主体性を重視した人事制度を企画・推進することです。
さらに具体的な内容は、等級・職群や人事評価、報酬・退職金などに関する制度の企画・推進をはじめ、KDDIグループ全体における人事戦略の立案・推進などです。そのほか、働き方改革をはじめ、社内副業制度や社内DXなどの推進も想定されています。
経験を活かせる領域やチャレンジしたい領域を任せることを予定しています。チームを横断した人事制度企画を推進するプロジェクトにも参加でき、企画力の向上も目指せるとのことです。
待遇については、雇用形態や給与、休日、諸手当、給与改定、賞与、勤務時間、福利厚生などが記載されています。
【求人から読み取れるジョブ型の動向】
仕事内容を確認すると、仕事に就くメリットまでが記載されており、プロを採用するというより、仕事を選択してもらうというニュアンスが読み取れました。
また、KDDIの人事制度企画・推進担当という職種は、業務が幅広くて限定されていないように見える方もいることでしょう。
しかし、ジョブ型において限定する範囲の広さは重要ではありません。限定されていればジョブ型に該当します。
募集背景には、人事制度改革の過渡期を迎えていることに触れてあります。過渡期とは、物事が移り変わる途中の時期をさす言葉です。この言葉から、KDDI版のジョブ型人事制度は、まだ安定していないということが読み取れます。
職種2.コネクティッドカー向け通信サービスの戦略・企画
※参考
S218コネクティッドカー向け通信サービスの戦略・企画
(KDDI株式会社)
コネクティッドカー向け通信サービスの戦略・企画という職種も募集されていました。
【仕事内容】
仕事内容は、日本の基幹産業である自動車業界において、IoTをベースに新しいコネクティッドカービジネスの創出をサポートすることです。IoTサービスの戦略立案・企画を担います。
具体的には、コネクティッド機能を利用したエンドユーザー向けのサービスを企画する業務だとされています。
【求人から読み取れるジョブ型の動向】
仕事内容を見る限りでは少し漠然としていて、明確に定義されているように感じないかもしれません。
また、仕事内容と同じくらい採用メッセージが記載されている点も特徴です。一般的なジョブ型において、採用メッセージは職務定義書であまり重視されていません。
KDDI版のジョブ型と銘打っていることもあり、海外で知られているジョブ型とは、必ずしも同じではないのでしょう。
募集要項の記載事項について、今後の変化に注目です。
KDDIの募集要項と一般的な職務定義書を比較
KDDIのジョブ型移行を分析するために、一般的な職務定義書の特徴も知っておくとよいでしょう。
アメリカ型の職務定義書では、まずポジションの情報があります。たとえば、セールスマネージャーやセールスジェネラルマネージャー、アシスタントなどです。
職位は、社長をはじめ副社長や副部長などの役職であり、報告先についても記載があります。
報告先の職位について記載がないと、責任の範囲が不明確になるため、アメリカでは必ず報告先の職位を記載するのが一般的です。
雇用条件の記載は、基本的に冒頭に配置されることが多くなっています。KDDIの募集要項では後半部分に記載されていました。年間所定労働日数や福利厚生などの条件が該当します。
職務概要で記載する項目は、業務の目的や目標値、実際のタスク、責任範囲、期限、業務の比率などです
責任範囲については、多くの日本企業では記載していません。予算の決定権が良い例であり、KDDIの募集要項では見当たりませんでした。
人材の要件に関して、アメリカの職務定義書ではキッチリと記載されます。学歴や資格、要求するレベルなどです。マスターやドクターなどの学位まで記載されます。
ちなみに、SMP(Strategic Membership Program)では職務記述書を作成・管理できるツールも登場しています。もしよろしければ、下記のサービスも参考にしてみてください。
採用・配属・育成・評価のサイクルを効率化する14個のサービス
結論:KDDIはジョブ型に移行している段階
今回は公式ホームページの採用情報でKDDIの募集している職種を確認し、ジョブ型移行の動向を分析しました。
募集要項では、募集背景や採用メッセージに注力しているように見えます。一般的な職務定義書のモデルと比較すると、記載されていない項目があったり、重視している項目が異なったりしている印象です。
また、人事制度の企画・推進担当者を募集していたことからも、KDDIはジョブ型に移行している段階だと考えられます。
経営者の中には、ジョブ型を検討していても、何をすべきかわからないで、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
KDDIだけでなく、日立製作所や資生堂など多くの大企業がジョブ型人事制度に乗り出しています。
理想の雇用形態を検討するために、今後も各社の動向を把握しておくとよいでしょう。
こちらの動画でも詳しく解説しています。よろしければご覧ください。
<継続解説>KDDIジョブ型どうなった?